農業の主要農機具「トラクター」とは?基礎知識・歴史・仕様などをご紹介

更新日2023年09月30日

農業の主要農機具「トラクター」とは?基礎知識・歴史・仕様などをご紹介

 

 

トラクターとは

 

トラクターはけん引を目的とした車両の総称です

一般的にトラクターというと田畑で作業するトラクターを指しますが、正式には「農業用トラクター」と言います。

トラクターは、単体では農作業を行うことができませんが、作業機(アタッチメント)を付け替えることで様々な農作業が行える万能な農機具になります

 

ちなみに、トラクター(tractor)の語源は、ラテン語の「trahere(引っ張る)」が由来と言われています。

 

 

トラクターの歴史

フォードソンのトラクター

 

農業の機械化が進んだ現代ではトラクターが当たり前のようにありますが、昔の農作業は全て人の手で行われていたため相当な労力がかかっていました。

牛や馬などの家畜に農具を引かせて土を耕したり運搬作業を行っていたものがトラクターのもととなります。

 

世界のトラクターの歴史

世界で初めてトラクターが開発されたのが1859年と言われています。

イギリスのトマス・アヴェリングによって蒸気式のトラクターが販売されましたが、蒸気機関の使い勝手の悪さや安全性にも大きな問題があったため、普及には至りませんでした。

1892年、アメリカのジョン・フローリッチは、初めて内燃機関式のガソリンエンジンを搭載したトラクターを開発しました。これにより、蒸気式のトラクターから内燃機関式のトラクターへと移り変わっていくことになりましたが、残念ながら発売当時はなかなか売れませんでした。

その後も、内燃機関式のトラクターは、普及されるまでにかなりの時間を要することになりましたが、のちに普及が一気に加速する出来事が起こります。

1917年に、アメリカのヘンリー・フォードは「フォードソン・トラクターF型」を販売しました。

ヘンリー・フォードは当時、自動車の大量生産で成功を収めていて、のちに自動車王と呼ばれる人物です。ベルトコンベア式の大量生産によって生まれたトラクターは低価格を実現しました。これにより爆発的大ヒットとなり、ようやくトラクターは普及し始めることになりました。

1920年代には、世界のメーカーがフォードソンのトラクターと同タイプのトラクターを製造・販売したことにより、内燃機関式がトラクターの標準となりました。

それから、トラクターの開発が進み、様々な機能の追加や仕様が変更されていきます。

1922年に、アメリカのインターナショナル・ハーベスター社が「PTO」を導入し、1930年代には、ディーゼルエンジン、空気入りタイヤ、3点リンクなどが次々に採用されました。

この頃に製造されたトラクターが、現代のトラクターの基礎となりました

 

日本のトラクターの歴史

日本で初めてトラクターが導入されたのは、輸入された海外製のトラクターからになります。

1909年に蒸気式トラクターを、1911年には内燃機関式トラクターを輸入したのが日本初上陸といわれています

しかし、日本でもトラクターはなかなか普及には至らず、ごく一部の農家にしか使用されていませんでした。

当時、トラクター(乗用型トラクター)よりも使用されていたのが耕運機(歩行型トラクター)です。トラクターと同じく耕運機も輸入に頼っていましたが、1931年に国産初の耕運機が生産されました。トラクターよりも先に耕運機の国内生産が始まったこともあり、戦後までは耕運機が主流となります。

戦後、さらに生産・普及が加速した耕運機でしたが、ここでようやくトラクターも国内で生産が始まることになります。

1960年、クボタは国産初の「畑作用乗用トラクターT15形」を完成させました

そして1963年にはヤンマーが、1965年にはイセキがそれぞれ自社初のトラクターを生産・販売を開始しました。徐々に国産のトラクターの生産数が増え、普及が進んだことにより、農作業にかかる労力が大きく軽減されるようになりました。

 

国産のトラクターが登場してから60年以上経った今では、トラクターは様々な進化を遂げています。

二輪駆動から四輪駆動へとなったことでけん引力がアップし、自動水平制御装置が搭載されたことで凸凹した地面でも耕うんや代掻きがより綺麗に仕上がるようになりました。また、キャビン付きのトラクターが登場したことで、気温や天候の変化があっても快適に作業ができるようにもなりました。

近年では、農業の担い手不足や高齢化の問題に対して、運転経験が少ない人にも安心な直進アシスト機能や無人で走行可能なロボットトラクターが登場しています。これからもトラクターはまだまだ進化を続けています。

 

 

トラクターの仕様

トラクターのエンジン

 

トラクターのエンジン

トラクターのエンジンは主にディーゼルエンジンが使用されていて、燃料は軽油を使用します。(まれにガソリンエンジンのトラクターもあります)ディーゼルエンジンは高いパワーを持ち燃費が良いのが特徴で、農作業を行うトラクターにはピッタリなエンジンです。

実は、ディーゼルエンジンが普及されるようになったきっかけは、ヤンマーの功績が大きく関わっています。農機具メーカーとして有名なヤンマーですが、もともとは発動機(エンジン)の開発・製造・販売から始まりました。そしてヤンマーは、1933年に世界で初めてディーゼルエンジンの小型実用化に成功し、様々な分野において多大な貢献をしました。

それからは農機具をはじめ、船や建機などで幅広くディーゼルエンジンが採用されるようになりました。

 

トラクターのタイヤ

トラクターのタイヤのタイプは「ホイール」「フルクローラ」「ハーフクローラ」の3種類あります。

スタンダードなのは、車と同様の前輪・後輪がホイールタイプのトラクターです。メリットは走行性に優れていて圃場まで離れていても移動がしやすいところや小回りが利き操作がしやすいところです。

フルクローラのトラクターは、コンバインと同じように左右1本ずつの長いクローラによって走行するトラクターです。フルクローラのメリットは、地面との接地面が広いため接地圧が低く、圃場の土を踏み固めづらいため作物の根張りを阻害しないところです。

そして、ハーフクローラはセミクローラとも呼ばれ、前輪はホイールタイプ、後輪は三角形の形をしたクローラタイプのハイブリッドなトラクターです。ハーフクローラのメリットは、ホイール、フルクローラのメリットを併せ持ち、けん引力と走破性に優れているところになります。

 

トラクターと作業機(アタッチメント)について

トラクターと作業機は、2点・3点の「リンク機構」によって繋がり支えられています

2点リンク、標準3点リンク、特殊3点リンクがあり、20馬力未満の小型のトラクターや古い型式のトラクターでは主に2点リンク、20馬力以上のトラクターからは3点リンクが使用されています。トラクターと作業機を別々に購入するときなどでは、双方のリンク機構が異なる場合がありますので注意が必要です

そして、リンク機構の他にトラクターと作業機をつないでいる部分があり、その箇所を「PTO」と言います。

PTO(Power take-off )は、トラクターの動力を作業機に伝える「動力取り出し装置」の意味になります。PTOがあることにより、ロータリーなどの作業機は爪を高速で回転させることができるようになります。

また、プラウやサブソイラといった作業機では、動力が必要ないためPTOは使用しません。このような作業機の場合は、トラクターのけん引力のみで作業を行います。

トラクターは、馬力が大きいほどサイズの大きい作業機を取り付けることができ、作業効率アップが図れます。そして、取り付けられる作業機の種類も増えるので農作業の幅を広げることができます。

 

 

トラクターと作業機でできる農作業

農作業をしているトラクター

 

最初にも言ったように、トラクターはけん引車両であって、トラクター単体では農作業を行うことができません

様々な作業機を取り付けることにより、一役で何役もこなす万能な農機具となります。

それでは、トラクターに作業機を取り付けることでできる作業を紹介します。

 

▼トラクターの作業機についてはコチラ

トラクターの作業機・アタッチメントの種類一覧

 

耕うん

耕うん作業は、種を播く前・苗を植える前の準備として、どの作物を育てる場合でも必要不可欠な作業です。

耕うんは、主にロータリーを使用し、高速に回転した爪によって土を掘り起こし細かく砕いて土を平らにならす作業になります。

耕うんをすることで、土は柔らかくなり空気を含むため通気性、保温性、排水性などが良くなります。

また、根の張りも良くなり除草効果もあるため、作物の生育に適した土壌作りのために行っています。

 

代掻き

代掻き(しろかき)は、水田の土を細かく砕き泥状にかき混ぜて表面を平らにする作業です。

代掻きは苗を植えやすくするとともに、雑草の繁殖を抑え、水田の漏水を防ぐ効果などがあるため、水稲栽培において重要な作業となります。

代掻きをするためにはハローを使用します。

ハローの代用としてロータリーを使用して代掻きをすることも可能ですが、より綺麗な仕上がりを求めるならハローのほうがオススメです。

 

畦塗り

畦塗り(あぜぬり)とは、田んぼを囲む畦(あぜ)に粘土状の土を塗り固めて、田んぼの水を外へ流れ出ないようにする作業です。

細かい隙間やモグラの通った穴などを塞ぐことができ漏水を防ぎます。

トラクターに取り付ける作業機は、畦塗り専用の畦塗り機を使用します。

 

播種

播種(はしゅ)とは、種まきの作業のことです。

特に広大な圃場を持つ農家は、作業機の播種機を導入していて、圃場全体の種まきを均等かつ素早く行うことができます。

また、播種機にはトラクターに取り付ける作業機以外にも、手押し式の小さな播種機もあり、小規模農家や家庭菜園をされている方にはこちらが主に使用されています。

 

畝立て

畝(うね)とは、作物を作るために土を細長く直線状に盛り上げた場所のことで、その土を盛り上げて土台を形成する作業のことを畝立てと言います。

畝立てを行う理由は、水はけ・通気性の向上、作物の根の張りが良くなり生育促進や倒伏防止の効果などがあります。

畝立て作業を、きれいかつ素早く行うために畝立て機が使用されます。

 

マルチ

マルチは、畑の畝を覆う際に使用するビニールやプラスチックフィルムのような資材のことで、その作業をマルチ張り(マルチング)と言います。

マルチ張りをすることで、地温調節、雑草抑制、乾燥防止、病害予防などの様々な効果が得られます。

マルチ張りは、マルチャーと呼ばれるトラクターの作業機や管理機のアタッチメントなどを使用することで、きれいに仕上げることができます。

 

消毒・除草

無農薬栽培でない限り、細菌や害虫の駆除、雑草の抑制などの目的のために農薬や除草剤を撒くのが農業では一般的です。

小規模な農家なら動力噴霧機などを使用し消毒作業を行いますが、大規模な農家ならブームスプレーヤと呼ばれる作業機を使用します。

ブームスプレーヤは、左右に伸びたブームから広範囲にわたって薬剤などを噴霧できるものになります。

 

施肥

施肥(せひ)とは、田畑の作物の成長を促進するために肥料を与えることです。

肥料散布機を使用することで、トラクターを走行しながら後方から肥料を散布することができます。

作物や肥料の種類によって、ブロードキャスタ、ライムソワー、マニュアスプレッダなどの肥料散布機が使用されます。

 

収穫

一部の野菜では、トラクターに作業機を装着し収穫作業を行うことができます。

掘取機を使用することで、畑の土を一気に掘り起こしてサツマイモ、ジャガイモ、たまねぎなどの収穫が可能になります。

 

運搬

収穫物や肥料、農機具など運搬作業にもトラクターが用いられます。

フロントローダーをトラクターの前方に装着すれば重量のあるものも難なく持ち上げることができ、トレーラーを後方に取り付ければ大型トラックのように運搬することが可能になります。

 

草刈り

一般的に草刈機は、手持ちや手押しの草刈機を思い浮かべますが、トラクターの作業機として取り付けるタイプの草刈機もあります。

作業機はフレールモアやハンマーナイフモアなどがあり、トラクターで走行しながら広範囲の草刈りを短時間で行えます。

 

除雪

北海道、東北地方などの積雪量が多い地域では除雪作業が必須です。

トラクターに除雪機を取り付ければ、道路をはじめ農作業の妨げになる場所の雪も一気に取り除くことができます。

 

 

トラクターの購入方法や注意点

複数のトラクター

 

トラクターは、農機具店・JA(農協)・メーカー直営店・インターネットなどで購入することができます。新品のトラクターの場合、自動車を購入するのと同じくらい高額となるので、慎重に選ぶようにしましょう。

初めてトラクターを購入するなら、実店舗のある農機具店やJA、メーカー直営店がオススメです。実際にトラクターを確認することができ、適したトラクターを相談することもできるので安心です。

少しでも購入コストを抑えたいなら、中古トラクターを購入する選択肢がありますが、初めてトラクターを購入する方は特にご注意ください

安いという最大のメリットがある反面、購入後すぐに故障する可能性があったりアフターサービスの受けやすさにも影響が出る場合があります。中古トラクターで失敗しないためには、農業やトラクターに関する知識と購入先のお店選びなどが大切になります。

 

▼中古トラクターの購入するときのポイントや注意点についてはコチラ

中古トラクターの選び方・購入する際の注意すべきこと

 

 

トラクターのオススメのメーカー

クボタの看板

 

トラクターのメーカーで迷ったときは、下記の国内の4メーカーから選ぶと良いでしょう

・クボタ

・ヤンマー

・イセキ

・三菱マヒンドラ農機

国産のトラクターは、耐久性の高さや壊れにくさに定評があります。特にクボタはトラクターの性能の高さもさることながら、国内シェア1位ということもあり安心感があります。

 

一つ注意することと言えば、購入後のアフターサービスについてです。

購入したトラクターのメーカーに対応した農機具店やメーカーの営業所がお住まいの近くにない場合、修理・メンテナンスに時間がかかることがあります

また、海外のメーカーのトラクターを購入した場合も同様で、部品の取り寄せなどでも時間がかかる場合があります。特別な理由がない限りは、まずは国内メーカーを選ぶことをオススメします。

長くトラクターを使用していく上では、アフターサービスの受けやすさのことも考えてメーカーを選ぶことが大切です。

 

 

 

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この記事を書いた人

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代表取締役 道地竜史
農機具買取モノリーフ代表取締役
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