更新日2023年09月05日
トラクターにとって使用時間(稼働時間)はとても大事な情報です。
トラクターには、「アワーメーター」と呼ばれる使用時間を計測し表示してくれる装置が付いています。
自動車でいうところの走行距離を計測するオドメーターと似た位置づけになります。
アワーメーターは、トラクター以外ではコンバインや田植機にも備え付けられていますが、これらのすべてに付けられているわけではなく、古いものや一部のモデルには付けられていません。
アワーメーターが付けられている主な理由は、メーターが示す使用時間をもとに点検や部品交換などの時期を知る目安とするためです。
これにより、メンテナンスの時期を逃すことなく故障のリスクを下げることができます。
【アワーメーターとは】
アワーメーターは、基本的にエンジンをかけてから切るまでの時間を使用時間として計測しています。
そして、それらを蓄積したトータルの時間数を表示しています。
アワーメーターの表示形式には、「アナログ」と「デジタル」の2種類があります。
古いトラクターにはアナログのアワーメーターが使用されています。
そして、徐々にデジタルへと移行されていき、近年のトラクターのほとんどはデジタルのアワーメーターが使用されています。
それでは、アワーメーターの見方を解説します。
アナログではメーターの数字が5桁前後あり、単位は「h(アワー/時)」となります。
数字の背景が白に色分けされている一番右の一桁が小数点第一位ですので、読み間違いには注意しましょう。
例)「04653」 ➡ 「465.3時間」(使用時間は465時間と20分弱)
ちなみにデジタルのアワーメーターはこのような感じです。
トラクターによって、小数点第一位までの表示があるものやないものがあります。
▼注意点
アワーメーターの中には、エンジンをかけていなくても鍵をONに回しているだけで使用時間を計測するものもあります。
そのため、気付かないうちに使用時間をカウントされ続けていた、ということが起きてしまうので注意が必要です。
これでは正確な使用時間を計ることができませんので、使用しないときは鍵がOFFになっているかを確認、もしくは鍵を抜いておくようにしましょう。
使用時間を知っておくことはとても重要です。
最初にも言ったとおり、アワーメーターはトラクターの使用時間からメンテナンスの時期の目安がわかるように備え付けられています。
では、どれくらいの使用時間となったら何をしなければいけないのか、一例を紹介していきます。
▼クボタのトラクター「KL265」の場合
こちらは、クボタのトラクター「KL265」の取扱説明書に記載されている、定期点検箇所一覧表になります。(まだまだ項目はありますが、ここでは省略します)
「〇」の付いたところが、パーツ交換や点検をする時期の目安となっています。
最初の50時間~100時間にある「◎」でもパーツ交換や点検を必ず行い、その時間を基準に各項目の規程の時間ごとにメンテナンスが必要になります。
また、メーカーや機種によって推奨されている点検の間隔などが違う場合があります。
トラクターの取扱説明書などを必ず確認するようにしましょう。
【各メーカーの取扱説明書が確認できるページ】
▼クボタ
▼ヤンマー
▼イセキ
▼三菱マヒンドラ農機
お手元に取扱説明書がない場合は、上記の各メーカーのページにて型式を入力することで閲覧が可能です。
※ヤンマーでは、閲覧に名前やメールアドレスの登録が必要です。
あくまで使用時間は目安ですので、使用頻度が少なく既定の時間に達してないからといってメンテナンスを怠ってはいけません。
その場合は、最低でも1カ月に1度、半年に1度、年に1度と決めておくのも良いかもしれません。
項目ごとにメンテナンスの頻度が異なりますので、各メーカーが推奨するタイミングを確認しておくと安心です。
トラクターの使用時間は寿命の目安としても考えられています。
これは自動車でいうところの走行距離と同じような関係性です。
一般的にトラクターの寿命はおよそ「1,000時間~3,000時間」といわれていて、使用年数ではおよそ「10年~20年」となります。
なぜ、これほどまでに時間に差が出るのでしょうか?
それには、トラクターの馬力が大きく関係しています。
「馬力×100時間=トラクターの寿命」
これを見てわかるように、トラクターは馬力が小さいほど寿命は短く、馬力が大きいほど寿命は長くなります。
20馬力のトラクターなら、2,000時間が寿命の目安というわけですね。
しかし、実際のところはこの計算通りとはいかず、20馬力のトラクターの平均寿命は1,500時間ほどといわれています。
また、適切な時期にメンテナンスがされていなかったり、屋外で保管していたりすると1,000時間も持たない場合もあります。
馬力が大きいほど寿命が長いというのは事実ですが、あくまで目安ということは覚えておきましょう。
メーカーでは自社のトラクターなどの農機具に対して、寿命の目安を明言していません。
それは、使用時間や馬力だけでなく、使用頻度・保管方法・メンテナンスなどの実際の状況によっても寿命は大きく左右されるからです。
(クレームの元ともなりえますから明言しないのは当然といえば当然ですかねw)
結局のところ、使用時間は寿命の一つの判断材料であり、使い方次第で長くも短くもなるということになります。
【使用時間から予測できること】
もし、中古のトラクターを購入するとしたらどのような情報に注目して選びますか?
馬力・性能・状態の良し悪しはもちろん、使用時間はできるだけ短いものを選ぶかと思います。
使用時間が短い=年式は新しい?、不具合は少なく問題なく動きそう、まだ壊れなさそう
使用時間が長い=年式は古そう、なにか不具合がありそう、購入した後すぐに壊れるかもしれない
このように、トラクターの使用時間からは様々なことが予測でき、購入の際の判断材料になります。
故障のリスクを考えると、やはり使用時間が短いほうを選びたくなりますね。
これにより需要が大きく変化し、価格にも影響が出ることになります。
【使用時間ごとの中古価格への影響】
基本的には、使用時間が短いものは中古価格は高く、長くなればなるほど中古価格は下がっていきます。
例)20~30馬力程度のトラクターの場合
使用時間 | 300時間以内 | 500時間前後 | 1,000時間以上 |
中古価格(相場) | 一番高い | 高い | 中~低 |
使用時間ごとの中古価格の変化はこのようなイメージです。
1,000時間以上も使用していると、どこかに不具合が起こっていたり、そうでなくとも故障するリスクが高い状態といえるので中古価格は下がる傾向にあります。
ですが、馬力の高いトラクターの場合、1,000時間以上であっても高値で取引されている機種が多くあります。
その理由は、馬力の高いものほど寿命が長く、価格が大きく下がるラインも1,500時間、2,000時間となるからです。
中古価格に大きな影響を与える使用時間の長さは、トラクターによって異なるということになります。
そして、これらは中古のトラクターを売却する際の買取価格も同様です。
少しでも高く売るなら、できるだけ使用時間が少ないうちに売るのがベストとなります。
ここまでトラクターの使用時間についてお話させていただきましたが、この重要な情報である使用時間を利用した悪徳業者がいることをご存じでしょうか?
それは、買取したトラクターのアワーメーターの時間を巻き戻して、短い使用時間と偽って高く販売するというものです。
これは詐欺にあたり、メーターの改ざんは中古自動車業界でも大きな問題となっています。
特に、古いトラクターなどに付いているアナログのアワーメーターは巻き戻しが容易といわれていますので、中古で購入する際には注意が必要です。
一方、デジタルのアワーメーターでは改ざんが容易ではないためリスクは低いです。
【詐欺に遭わないために気を付けること】
・利用する業者選びは慎重に
まずは、悪徳業者から購入しないために、業者の口コミや評判などを調べてから利用するようにしましょう。
少しでも不審に思う点があったら迷わず利用しないことで、未然に詐欺に遭うリスクを回避できるはずです。
・古いトラクターで使用時間が短いものには気を付ける
単純にあまり使われてこなかったトラクターの可能性も高いですが、一度冷静に考える時間を作ることが大切です。
稀に、アワーメーターの故障でメーターが止まっている可能性もあります。アナログの場合で起こりえますので、購入の際は確認するようにしましょう。
・アナログのアワーメーターのトラクターを選ばない
中古でトラクターを選ぶならデジタルのアワーメーターのほうが改ざんのリスクが低いので検討してみてください。
・トラクターの使用時間はアワーメーターで確認する
・使用時間は点検や部品交換の時期の目安となる
・使用時間は寿命の目安にもなるが、使い方や適切なメンテナンスがされているかによって寿命は長くも短くもなる
・使用時間の長さは中古価格に影響する大事な情報
・中古でトラクターを購入する際は、アワーメーターが改ざんされたものを掴まされないように、業者選びやトラクター選びに注意が必要
使用時間が持つ情報は重要ですが、それがすべてというわけではありません。
使用時間は一つの指標ということを理解し、うまく活用していきましょう。
▼トラクターの買取はコチラ
代表取締役 道地竜史
農機具買取モノリーフ代表取締役
皆様が安心してご利用いただけるよう、日々丁寧な対応を心がけております。農機具のことでご相談などがございましたら、お気軽にお問い合わせください。