更新日2024年08月05日
スマート農業では、最先端技術やICTを活用した営農支援システムやロボット農機が数々登場してきました。
日本の農業では、新規就農者の減少・高齢化などの問題が深刻化していて、これらの問題の解決に貢献しているロボット農機には今注目が集まっています。
今回は、そんなロボット農機の中から、無人で自動運転可能なロボットトラクターをピックアップし、特徴や導入のメリットなどをご紹介したいと思います。
無人トラクターは、その名の通り搭乗せずとも無人で自動走行するトラクターです。
専用のタブレットやリモコンを使用し、あらかじめ登録した作業経路に基づき自動で農作業を行うことができます。
自動走行中は、装備されたレーザーやソナーで人や障害物を検知し、近づくと自動で停止するほか、ほ場からはみ出したり作業経路から外れた場合でも停止するので、安全にも配慮されています。
自動走行に必要なトラクターの位置情報は、GNSS(GPSを含む衛星の総称)と地方自治体やJAが設置した基地局などから得られる補正データにより、高い精度で特定されています。その誤差はなんと数cm以内と驚きの精度です。
とはいえ、無人トラクターを使用中は、使用者はほ場内もしくは圃場周囲からの常時監視が必要になります。万が一、危険な走行があった場合には、すぐに停止できるようにしておかなければなりません。
まだ完全な無人化とはなりませんが、スマート農業が推進されている近年、無人トラクターの登場は農作業の大幅な省力化を実現しています。
無人トラクターでは、主に耕うん、代かき、粗耕起、肥料散布、播種などの作業が自動で行えます。
現状は、全ての種類の作業機には対応しておらず、無人での作業内容は限られています。
一般的に、ロボットトラクターは自動走行を搭載した無人仕様・有人仕様のトラクター両方を指し、無人仕様のトラクターを無人トラクターといいます。
有人仕様のロボットトラクターは、従来のトラクターのように搭乗が必要ですが、手動・自動どちらでも運転可能で、ほとんどの作業を自動で行うことが可能です。
また、熟練者でなくとも精度の高い作業が可能になるので、トラクターの扱いに慣れていない人でも安心して運転できます。
ちなみに、ヤンマーでは、無人仕様のトラクターをロボットトラクター、有人仕様のトラクターをオートトラクターと呼んでいます。
▼LEVEL0
従来の完全手動運転のトラクター
・使用者は搭乗し、走行や作業は全て手動で操作。
▼LEVEL1
自動操舵システム・直進アシスト、有人仕様のロボットトラクター
・使用者は搭乗し、走行や作業の操作は一部自動化。
・自動化されていない部分は、手動で操作が必要。
▼LEVEL2
無人トラクター(無人仕様のロボットトラクター)
・使用者は搭乗せず、走行や作業は自動操作。
・ほ場内またはほ場周囲の目視可能な場所で監視が必要。
・危険の判断や非常時の操作は使用者が行う。
・センサーなどで自動停止が可能な装備によってリスクを低減。
▼LEVEL3
完全無人化のロボットトラクター(研究段階)
・使用者は搭乗せず、走行や作業は全て自動操作。
・周囲の監視や非常時の停止操作はロボット農機(システム)が行う。
・使用者は離れた場所でモニターなどを使用し遠隔で監視する。
現在、LEVEL2の無人トラクターまで実用化がされていて、LEVEL3の完全無人化まであと一歩のところまで来ています。
実際、クボタは2026年に遠隔で監視できるトラクターなどの無人農機を実用化させると発表しています。
これがが実用化されれば、自宅にいながらロボットトラクターを監視することができたり、離れた場所で別の作業を行うことができるので、さらなる省力化・軽労化などにつながることでしょう。
無人トラクターは、1台導入すれば単純に人一人分の働きをしてくれるので、2倍のスピードで農作業を終えることが可能です。
特に、広大な面積のほ場であればあるほど、大きな効果を得られます。
また、天気が良い日にどれだけの作業を終わらせられるかが重要な農業においては、作業時間の短縮は非常に大きなメリットになります。
浮いた時間で別の作業を行ったり、体を休める時間を作ることもできるので、生産性は確実に上がることでしょう。
無人トラクターを使用するときは、専用のタブレットで作業範囲やルートの確認や設定を行い、リモコンのスイッチ一つでトラクターは作業を開始します。
その作業精度は熟練者のように高く、無駄な動きや作業ムラが少ない仕上がりが可能になります。
また有人仕様の場合であっても、ほ場の形に合った最適な作業ルートを自動で走行・操作してくれるので、特別難しい操作はいらず経験の浅い就農者でも高精度かつスピーディーに作業を行うことができます。
別のトラクターを近くで運転しながら無人トラクターを自動運転にし、使用者一人でも2台同時に作業することが可能になります。
無人トラクターの監視は、近くにいさえすればトラクターやその他の農機具で作業しながらでも大丈夫です。
使用例としては、無人トラクターが耕うん作業で先行し、その後を追うように使用者が乗ったトラクターで播種、施肥、薬剤散布などを行います。
このような方法を協調作業といい、作業効率のアップはもちろんのこと、耕うん直後の水分を多く含んだ土に種まきが行えることで発芽率が向上したという事例もあり、品質の向上にも期待ができます。
詳細
型式:MR100AH
馬力:100馬力
▼メーカー希望小売価格(税込み)/2023年
有人仕様:14,228,500円~14,847,800円
無人仕様:16,677,100円~17,296,400円
特徴
無人の自動運転では耕うん・代かき・粗耕起・肥料散布・播種作業が可能。
タブレットを使用しほ場のマップを自動作成、ほ場ごとに最も効果的なルートを生成、自動運転の監視、遠隔操作などが行える。
オートステア(自動操舵)により、トラクターの運転に慣れていない人でも高精度な作業が実現し、労力の軽減や生産性も高まる。
障害物を検知するレーザーやソナーを装備し、障害物に接近したりほ場からはみ出しそうになる場合には自動運転を停止する。
最先端技術やICTを活用したクボタの営農支援システム「KSAS」にも対応し、さらなる品質向上や収益増加へのサポートが充実。
出典:ヤンマー トラクター「ロボットトラクター/オートトラクター」
詳細
型式:YT488A/YT498A/YT4104A/YT5113A
馬力:88馬力/98馬力/104馬力/113馬力
▼メーカー希望小売価格(税込み)/2023年
有人仕様:12,743,500円~16,087,500円
無人仕様:14,635,500円~17,979,500円
特徴
無人の自動運転では耕起・代かき・施肥・播種作業が可能。
タブレットでほ場を登録、作業機の設定、旋回パターンの設定などを設定すれば、簡単に自動運転がスタートできる。
直進アシスト搭載で、どんな人でも高精度、高効率で作業ができ疲れにくい。
ほ場の約9割を自動で作業できる。メーカー3社のロボットトラクターでは最高の113馬力、最大4500kgfの油圧揚力を持つ。
ヤンマーの提供するICTを活用したサービス「スマートアシスト」に対応し、営農支援や農機具の状態を管理してくれるサポートが受けられる。
詳細
型式:TJV755M1/TJV755R3/TJV985M1/TJV985R3
馬力:75馬力/98馬力
▼メーカー希望小売価格(税込み)/※2021年
有人仕様:10,450,000円~13,159,300円
無人仕様:13,200,000円~15,909,300円
※イセキの公式HPでは2023年現在のメーカー希望小売価格の記載がないため、2021年の価格を記載
特徴
無人の自動運転(ロボットモード)では耕起・深耕・砕土・代かき・除草作業が可能。
タブレットで作業登録、走行・旋回パターンの設定、経路設定などを行い自動運転を開始する。
直線作業をアシストする自動操舵モードを搭載し、誰でも簡単に熟練者のように精度の高い作業が可能。
超音波センサと赤外線レーザセンサを装備し、障害物などを検知すると自動運転を停止する。
イセキの営農支援システム「イセキアグリサポート」は標準装備されていて、作業管理・機械管理のサポートが受けられる。
国内では、クボタ、ヤンマー、イセキがロボットトラクターを販売していますが、有人仕様で約1,000万円以上もするかなり高価なもので、無人仕様ではさらに価格は高くなります。
同じ馬力の通常のトラクターと比べてみると、少なくともその差額は約200万円~300万円ほど。小型のトラクターが1台購入できてしまう価格です。
費用を考えると導入したくてもなかなか手が出しづらいのが現状です。
しかし、ロボットトラクターは条件や状況がしっかり合った人が導入すれば、費用対効果が高いのは間違いありません。
普及には時間がかかることが予想されますが、さらに需要が増えれば安価なモデルが出る場合もありますので、今後の動向に注目です。
無人トラクターでは、基本的な耕うん作業をはじめ、施肥や播種などの作業も行えます。
しかし、現在では自動で制御できる作業機が限られているため、ブーススプレーヤを取り付けた消毒作業などは無人ではまだできません。
また、あぜ際の回り耕ではトラクターに搭乗して作業が必要になります。
これからさらに開発が進み、細かな作業や複雑な作業にも対応した無人トラクターが登場することに期待が高まります。
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代表取締役 道地竜史
農機具買取モノリーフ代表取締役
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