更新日2023年10月12日
キャビン(cabin)は、日本語で「小屋、客室」などという意味です。
トラクターにおけるキャビンとは、トラクターの座席周りをガラスのドアや窓で囲んだ屋根付きの運転席のことをいいます。
運転席は自動車と同じように密閉された空間となり、エアコンやCDデッキが装備されているので、キャビンは静粛性や快適性を上げてくれています。
エアコン
夏に冷房・冬に暖房を付けることができるため、農作業中の快適性がアップ。
自動で温度調整をしてくれる省エネなオートエアコンタイプもある。
ラジオやCDデッキなどのオーディオ
運転しながら好きなラジオや音楽を聴くことができる。
遮音性のあるキャビンにより、エンジン音が聞こえづらくなったことで可能となった。
ドリンクホルダー・小物入れ
ペットボトル飲料や携帯電話などを置くことができるドリンクホルダーや小物トレーを配置。
USBソケットを装備している機種もあり、キャビン内で様々な機器を充電をすることが可能。
サスペンションシート
サスペンションがほ場を走行中の激しい振動を吸収し、快適な乗り心地を実現。
さらには座り心地にもこだわり、クッション性の高いシートやリクライニング機能を搭載したものもある。
サイドウィンドウ
キャビンには開閉できる窓を装備。
わざわざドアを開けずとも、手軽に外の人と会話ができたり、喫煙したい時などに便利。
トラクターのキャビンは、飛行機やロボットのコックピットを彷彿とさせますが、その見た目や快適性の向上の他にある重要な役割が存在します。
それは、走行中のトラクターのケガや死亡事故を減らすための安全装置としての役割です。
現在、トラクターでは、安全キャブまたは安全フレームの装着が義務付けられています。
安全キャブとはキャビンのことで、安全フレームというのは座席の後方に取り付けられたコの字型のフレームなどを指します。
そして、トラクターを運転する際は、安全フレームは必ず立ててから走行しなければいけません。
これによりトラクターの安全性を高めることができ、もし横転事故などを起こしてしまった場合には、トラクターの下敷きになるリスクを大幅に減少してくれます。
気温や天候の変化に強いのがキャビンの魅力の一つです。
キャビン仕様のトラクターにはエアコンが付いていて、夏は涼しく・冬は暖かく快適に農作業が行えます。特に、夏は熱中症に気を付けなければならないので、キャビンのエアコンがあることによって熱中症対策にもなります。
そして、雨や雪が降る中の作業では、体が濡れる心配がありません。また、室内が雨風にさらされることもほとんどないので、座席シートなどが劣化しにくくなるのはうれしいポイントです。
農家の仕事は、気温や天候に左右されることが多いので、大きなメリットといえます。
農業を行う環境は田畑や山が近い場所が多いため、蚊、アブ、蜂などの様々な虫に遭遇することも多いでしょう。
キャビン付きのトラクターなら、運転席がガラスで囲われていることで、農作業中のあらゆる虫の侵入を防ぎます。
また、土ぼこりや泥跳ねも防ぐことができるので、運転席周りが汚れる心配がありません。掃除や手入れは簡単で楽になり、室内をきれいな状態に保つことができます。
そして、農薬散布時では、農薬の吸い込みのリスクが軽減されます。作業中、農薬が風に乗ってトラクターに直撃してもキャビンが守ってくれるので、安全かつ安心して農作業が行えます。
キャビン付きのトラクターは、室内が密閉されているため、トラクターのエンジン音などの騒音が軽減され、静かな空間で農作業を行うことができます。
また、CDやラジオが聴けるオーディオを装備しているのも特徴の一つです。近年では、BluetoothやUSB接続に対応したものもあるため、スマートフォンをつないで音楽を聴くことが可能です。
騒音のストレスから解放され、音楽を楽しみながら快適に農作業を行えることでしょう。
キャビン付きのトラクターは、機能が増える分、当然価格は高くなってしまいます。
キャビンなしとキャビン付きのトラクターの新品価格を比較すると、キャビン付きのほうが約50万円~100万円ほど(約1.1倍~1.2倍)高くなります。
仮に50万円であっても大きな出費です。「この費用分を他の農機具の購入資金に充てたい」と考える人もいることでしょう。
快適性を求めてキャビン付きを選ぶか節約のためキャビンなしにするか、購入は慎重に検討しなければいけません。
メンテナンスや修理費用についても、キャビン付きのトラクターのほうが高くなります。
というのは、エアコンが壊れたりガラスが割れたりした場合、キャビンなしのほうにはない修理費用が発生してしまうことがあるからです。
長い期間、使用していくとエアコンが壊れることがあります。もしそうなっては、夏の熱気がこもった室内で運転することは耐えられるものではなく修理しなければなりません。
エアコンの修理費用は「十数万円~」かかることも珍しくなく大きな出費となります。メリットであったエアコンがデメリットとなる可能性があるとはなんとも皮肉な話です。
ですが、近年のキャビンのエアコンは以前に比べ壊れにくくなっています。ただ、それでも絶対に壊れない保証はありませんので、「いつか壊れて修理費用がかかるかもしれない」ということは覚えておきましょう。
静粛性や遮音性の高いキャビンですから、外側から大声で声を掛けられても気付かなかったり聞き取れない場合があります。そのため、気軽に他の作業者と連携が取りづらいと感じる場面が出てきます。
しかし、その静かな空間を活かした解決策もあります。それは「電話」です。
キャビン内なら電話の声が難なく聞き取れ、ハンズフリーのイヤホンを使用すれば作業しながら通話することが可能です。(※スマートフォンを持ちながら、見ながらの運転は大変危険なので絶対にやめましょう)
また、キャビンに小窓が付いたシリーズもあるため、少しだけの会話ならこれで問題はないかもしれません。
キャビンの仕様上、周りはガラス張りでフレームが前方左右にもあるので、キャビンなしに比べるとどうしても視認性は劣ってしまいます。
キャビンなしのトラクターから乗り換えた人からすると、慣れるまでに時間がかかることがあるかもしれません。
ですが、メーカーの企業努力により、視認性は過去のシリーズよりどんどん向上しているのは事実です。
正直なところ、視界がいいか悪いかの感じ方は個人差があるので、購入を検討しているなら必ず試乗し確認しておきましょう。
同じシリーズのキャビン付きのトラクターとキャビンなしのトラクター(安全フレームを立てた状態)を比べると、キャビン付きのほうがサイズが若干大きいですが、高さや幅はそこまで大きな違いはありません。
しかし、キャビンなしのトラクターでは、安全フレームを折りたたむことができるので、高さを低くして倉庫に格納することが可能です。
一方、キャビン付きのトラクターでは、高さを変えることができないため、倉庫内で保管するには十分な高さが必要になります。
倉庫のスペースが確保できない人からすると、サイズが大きいことがデメリットとなります。
キャビン付きトラクターを中古で購入した際、失敗の事例としてよく挙げられるのがエアコンの故障です。
特に、インターネットのオークションサイトなどで購入する場合は注意が必要で、こちらでは一般の方や農機具専門でない業者が出品していることもあるため、未整備状態のトラクターが多く出回っています。
整備がされていないトラクターや長い使用時間のトラクターの場合、購入後にエアコンの故障が発覚することもありますので、十分にご注意ください。
中古で購入を検討しているなら、実店舗がある中古農機具販売店などに足を運び、きちんと整備されたトラクターを購入するのが安心です。
また、インターネットで購入する際も、できる限り整備済みのトラクターを選ぶようにしましょう。
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代表取締役 道地竜史
農機具買取モノリーフ代表取締役
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